お客様から信頼されるITエンジニアを育てるためには?
「次も◯◯さんにお願いしたい」
「困ったときには◯◯さんに相談しますね」
エンジニアとしてこのような言葉をもらえたら、エンジニア冥利に尽きます。会社としても指名をもらえるエンジニアが増えれば、追加受注の案件が増え、若手が経験を積む場を増やせることにもつながっていきます。
そんな好循環を生み出す人材にはどのような特性があるのでしょうか。
本記事では、お客様から信頼され、指名されるエンジニアを育てるには何に注力すべきかについて解説します。
お客様はシステム会社、エンジニアに何を期待しているのか
“ITを活用する”というのは、目的を達成するための一つの手段にすぎません。そして多くの場合、お客様はITの専門家ではないので、“IT活用”の具体的な実現方法のイメージを持ち合わせていません。お客様としては、描く未来像に到達するための最適なルートを一緒に考え、提案、構築してほしいというのが本心です。
マーケティング分野でよく引き合いに出される例えでいうと、お客様はドリル(システム)が欲しいのではなく、穴(目的を達成した状態)が欲しいのです。さらに言えば、お客様はどんなドリルがあれば穴を開けられるのかもよく分かっていないと考えた方が良いでしょう。
従って、お客様から何を期待されているのかを認識することで、エンジニアのお客様に対する姿勢も変わってきます。
要望の後ろに隠れているユーザーの意図にフォーカス
システム導入プロジェクトでよく繰り広げられるこのやりとり:
「△△ってできますか?」
「できます。/できません。/確認します。」
確かに聞かれていることは実装可否の答えではありますが、そこには必ず質問をしてきた理由があるはずです。ものづくりを得意とするエンジニアの方は、どうやったら実装できるか(How)、という部分に思考がいきやすく背景の理解(Why)が抜け落ちてしまいがちです。
ユーザーの要望がベストとは限らない
質問の経緯や抱えている問題によっては、必ずしもユーザーの要望がベストとは限りません。運用面、ユーザビリティ面、コスト面、そしてプロジェクト全体の指針としてお客様が掲げている優先順位、それらを鑑みてプロの目線から最適なソリューションを提案できたらどうでしょうか。
お客様は、自身の抜け漏れていた点もカバーされた案をもらえたことに感謝しますし、プロジェクトの目的から逸れかけた軌道を戻すことでプロジェクトの成功にも寄与するでしょう。
ベストに近づけるための相互理解
さらに付け加えるならば、システムを稼働させた後の世界を経験したことのないお客様にエンジニアからの提案を受け入れてもらうためには、関係構築が必要であり、相互理解が大切となってきます。
両者は使っている言語(組織や業務特有の言い回し、システム特有の表現)は異なっており、決めつけや思い込みが思わぬトラップとなることもあり得るのです。
両者が同じ事実を見ながらも異なる意見を持ち、そのいずれも正解ということがあるということ。自己認識と他者認識は、自身の想定以上に乖離している可能性があることを肝に銘じることがトラップの回避につながるでしょう。
技術の進化に伴い期待される役割の変化
技術の進化とは目覚ましいもので、何かをイチからつくったりコードを書いたりする必要性がなくなってきました。ITエンジニアもいかに“ITを活用”して顧客要望を実現するか、という方向にシフトしています。
こうなってくると、新しい技術のキャッチアップは不可欠となりますが、ITのプロとしてより重要性が増してくるものがあります。その技術がどのような仕組みで動いているのか、基本的なインフラ構造やアーキテクトの全体像を理解しているかどうかです。この差は、想定外の事態が起きたときに対処できるかできないかの差となって表れてきます。
何事も起きない間は、お客様からクレームが入ることはないですし、常時エラーなく動くことが当然と思われています。いざトラブルが起きたときに、原因の特定から対処まで迅速に対応できるかどうかが信頼の分かれ目となるのです。
技術の進化に影響されないコアスキル
技術の進化やトレンドは表に見える形で変わっていきますが、裏側でシステムを支える基本構造は変わっていません。ハード面では、この基礎知識がコアとなるでしょう。
そしてソフト面では、情報を構造化する力がコアとなるでしょう。足りないピースを把握し、ファクトとロジックを基盤に説明がなされることで、相手と感情論ではなく建設的な議論ができるようになります。
スキルの育成方法
ハード面
システムの仕組みや構造を理解するには、自分で手を動かしてみることが一番です。
例えばOSからセットアップしてみるといった具合に。基礎すぎると思われるかもしれませんが、やはりどんなプロフェッショナルも基本があってこそ、新しい知識をも活かす力が身につくものです。
ソフト面
情報を構造化するフレームワークを学び、実務で実践し、振り返りをし、自分なりの手法を確立することで身につけることができます。
構造化する力は1日や2日で身につくものではありませんが、このループを繰り返し行うことで、次第に脳内で論理構造を組み立てられるようになっていきます。
もちろんプロジェクトを推進する上でエンジニアに必要とされるスキルは他にもあります。プロジェクトマネージメント力やコミュニケーション力がよく上がりますが、それらを支える土台は何かというと、ロジカルシンキングにいきつくのです。
成長に必要な機会
知識の習得は自身の努力でもできますが、“知っている”状態を“実行できる”状態へ引き上げるには、実践の機会が欠かせません。実際にお客様と話をし、成功も失敗も振り返りながら経験を積むことで、成長実感を得ることにつながるでしょう。
より効率的に成長スピードを早めたい場合には、先輩から型となるフレームワークを教わり、チームでフォローする体制を組むことが考えられます。または、研修で外部の専門家から型を教わる方法もあります。
信頼されるエンジニア、指名されるエンジニアになる
お客様から専門家として見られているということ、そして期待されている役割を認識し、その役割を果たすために必要なスキルを身に着け、着実に実践経験を積む。すると、何をすれば相手が喜ぶ仕事ができるのかがわかるようになってきます。相手の期待値以上のバリューを出せるようになったとき、お客様は手放してくれなくなるでしょう。
お客様が手放したくないと思う人材を増やすには
- 期待されている役割を認識する
- 技術面において基礎知識の理解を軽んじない
- 目的が先、手段は二の次と心得る
- 相互理解に努める
お客様が手放したくないと思うような人材を増やすには、技術的なスキルだけではなく、ソフト面のスキル強化に着手をすることが有効と言えます。テクノロジーは新しいものが登場する度に学び直しが必要となりますが、プロジェクト推進やお客様との関係構築のスキルは汎用的で、身につけたものはこの先も変わらず求められ続けます。
EdWorksもこの汎用的なスキルが重要と考えており、体系的に学び身につける支援を行っています。
お客様から信頼されるITエンジニア、プロジェクトマネージャーを育てたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
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