問題解決力に必要な問題設定力とは

「表面的な言葉を並べているだけで根拠薄弱だな・・・」
「この人、あまり深く考えていないな・・・」
「解決策になっていない打ち手だな・・・」
このように感じてしまう発言を見聞きした経験は誰しもお持ちだと思います。

解決策の提示に至るまでの前段階で、事態が整理しきれておらず、欠けているピースが存在しているケースが多くあります。事態を整理し、欠けているピースを浮き彫りにするには、問題解決の考え方が有効です。

深く考える力を鍛えてほしいと思う相手に対して、どのような問いを投げ、アドバイスをするとよいのか、実務で陥りやすい罠と合わせてご紹介します。

問題解決力の主な構成要素

問題解決力の文脈において考える力は、複数の能力の総合力で発揮されます。
まずは問題解決力を分解し、主な8つの構成要素を下記に記します。

  • ロジカルシンキング(論理的思考力)
    論理的に物事を整理、体系立てていく能力
  • PDCA
    計画、実行、測定、次の行動をとれる能力
  • 問題発見
    解決すべき課題を見つけられる能力
  • 問題解決
    課題に対して最もらしい解決策を導き出せる能力
  • 定量分析
    課題解決を定量的なファクトで補える能力
  • 実行力
    解決策を適切に実行できる能力
  • 判断力
    大量の問題に対してスピード感を持って判断できる能力
  • 発想力
    課題に対して幅広い解決策を提示できる能力

上記の中で、考える力、伝える力を鍛えるベースにあるのは、ロジカルシンキングになります。経験や感情をもとに直感的に考えるのではなく、意識的に論理を使って理性的に考えること。これは、問題解決力で導き出した答えの確度を高めることにつながります。そして、論理的であることにより、他者と議論や検証を行うことができる状態となります。

問題解決に必要なスキル

ロジカルシンキング(論理的思考力)が土台としてあり、その上で問題発見の力、つまりはどこに問題を設定するのかを見極める力が問題解決には大変重要です。

有名な事例としてあげられる、1990年代に治安悪化が著しいニューヨークで新市長ジュリアーニ氏が取った施策を見てみます。

1992年には2,154件の殺人事件が起き、62万件の重罪事件が起きていました。
このときジュリアーニ氏は、凶悪犯罪の取り締まりを強化したのではなく、街中の割れた窓や壁の落書きを直し、軽犯罪の取り締まりを強化したのです。その結果、治安が大幅に改善し、殺人事件は67%減少したとも言われています。

成功の鍵は、犯罪が多発しやすい環境になっていることを問題に設定したことでした。

凶悪犯罪の多発
 ↑
モラルの低下
 ↑
軽犯罪の増加
 ↑
窓が割れている、落書きが放置されている

お金も人も限られる中で、もし凶悪犯罪の取り締まりを問題として設定していたとしたら、同じような大きな成果はあげられなかったかもしれません。
下記の問題解決の公式に当てはめて考えたとき、「原因(本当の問題)」の見極めが適切であったと言えるでしょう。

問題解決の公式

実務の中で発生するさまざまな課題に対しても、この公式に当てはめ、整理をすることができます。

売上が未達の状況を例に想定すると、
あるべき姿:売上3,000万円
現状:売上2,500万円
ギャップ:500万円
原因:新人の目標未達

ここから、ロジカルシンキングで用いるロジックツリーを活用して、原因を深堀りします。

新人の目標未達 ← 新人のスキル不足 ← 先輩社員がノウハウを共有していない ← 先輩社員のノウハウ共有の動機づけができていないことが問題として設定できます。

仕事の実務での問題設定の罠

問題を設定するときに大切なことがあります。それは、自身の力で解決できる問題を設定することです。

例えば、業務を遂行するためのスキルがチーム内で不足しているという問題に直面したとします。知識の標準化を問題として設定し、ベテラン社員のナレッジ集を作るという解決策であれば個人でも実施できます。しかし、そもそも該当スキルを持つ人が少ないことを問題に設定してしまうと、外部から知見のある人を採用することが解決策となってしまいます。人事権を持つ人であれば、解決策となるかもしれませんが、そうでなければ状況は変わりません。

一般社員を想定した場合、人の数と予算は自身の力では変えることはできません。人の質や情報など、その他の要素を洗い出して検討をすることが必要です。

要素の洗い出しには、MECE(事実、考察を漏れなくダブりなく押さえること)を意識して、ロジックツリーを書き出すことが有効な手立てとなります。

深く考える人材になるために

社員の考える力を鍛えてほしい場合は、以下のテンプレートで説明をしてもらうのが効果的です。

「〇〇を目指したい。しかし、現状は〇〇である。問題は〇〇なので、〇〇を解決するために〇〇を実施する。」

誰もが納得できる筋道立てた説明になっていれば問題はないでしょう。

〇〇の箇所が埋まらない、もしくは納得できる筋道になっていない場合、不足しているピースが簡単に浮かび上がります。

目的を問う

あるべき姿がないまたは曖昧な場合、そもそもの目的は何か問いかけ続けます。繰り返し問い続けることで、考えることを習慣化する手助けになります。

思い込みを捨て客観的に捉える

現状の認識が不足している場合、不都合な現実から目を背けている、または自分は理解していると思い込んでいる可能性があります。客観的な情報を集め、ファクトベースで捉えることで思い込みを打破できます。

「なぜ?」を繰り返す

ギャップから原因の深堀りが不足している場合、表面的な課題のみを見ており、根本解決にならない解決策につながってしまいます。これには、「なぜ?」を繰り返すことがおすすめです。原因1はなぜ起きているのか?原因2だから。では原因2はなぜ起きているのか?といった具合に。

解決策は最後

もう一つあげられるポイントとしては、解決策から逆算して考えている場合があります。厄介なことに、人は原因よりも解決策が好きという習性があります。しかし解決策を先に立ててしまうと、本当の問題は解決されない結果となる可能性があります。

紙に書き出す

問題解決は公式の中の要素が一つでも崩れると、成り立たなくなってしまいます。

慣れない内は、紙に書き出し、一つ一つの要素を埋めることが推奨されます。いざ書き出してみると、深堀り作業は難しく感じるかもしれません。手を抜くことなく繰り返していくと、次第に物事の表面ではなく、深部まで捉えることができるようになるでしょう。

問題解決力には、ここで触れているロジカルシンキング、問題発見、問題解決以外にも関連する要素が大きく5つあります。一つ一つの要素を高めていくことで、総合的に考える力の向上が期待できます。弊社では、一つ一つの要素を確実に消化しながら総合力を高めるトレーニングを提供しています。

誰もが納得できる筋道立てた説明ができる人材を育てたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。


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