働きがいを高める“フィードバック”を組織に定着させるためには?

組織の心理的安全性を高めたい、社員の働きがいやエンゲージメントを高めたい、このような理由からフィードバックを組織内のコミュニケーション手法として浸透させようとしている企業が増えています。

ここではフィードバックとは何か?どのように組織に定着させていけば良いのか?を解説します。

フィードバックとは何か?

フィードバックとは元々工学系で使われている言葉でした。機械(マシーン)に何かしらインプットするとアウトプットが出てきます。そのアウトプットが期待通りではない場合は、再度機械に対してインプットする側を修正します。これをフィードバックと呼んでいました。

ここから人間同士のコミュニケーションにおいても、他の人の行動や言動に対して良い点や改善点を伝え、その人の行動を修正していくことをフィードバックと呼ぶようになりました。

しかし、日本ではフィードバックを業績評価とつなげて「業績評価フィードバック」と呼んでいる企業が多かったため、フィードバックと言えば上司から部下に対して年に1回程度一方的にメッセージを伝えるものというイメージが定着してしまっています。

本来の姿は日常の全方位型コミュニケーション

本来のフィードバックは日常的に上司・部下問わず、全ての関係者が良い点や改善点を伝え合うコミュニケーションです。従って、上司から部下だけではなく、上司や同僚に対しても行うことが本来の姿です。

良い点を伝えるフィードバックを「ポジティブフィードバック」、改善点を伝えるフィードバックを「ギャップ(ネガティブ)フィードバック」と言います。

ポジティブフィードバックとギャップフィードバックの例を以下に挙げてみます。

このように年に1回ではなく、日常的に伝えていくことがフィードバックのポイントとなります。

妨げとなっている暗黙のルール

しかし、いざフィードバックを行おう!としても、すぐに実行に移せる人は多くありません。なぜなら、日本社会では昔から「察する文化」、つまり「みなまで言うな」というのが暗黙のルールであったからです。

そのため、部下の良い働きに気がついたとしても言葉にはせず、じっと見守るというやり方を取る人もいるでしょう。

また、小さいころから上下関係を意識する日本社会で育った人からすると、自分よりも立場が上の人に対して、何かしらモノを申すということに抵抗感を覚える人もいるはずです。

そこでフィードバックを定着させる取り組みが必要となります。

フィードバックをどのように組織に定着させるか?

これまで見てきた通り、フィードバックを活発に行うというのは、日本社会の常識や慣習にある意味反する行動となりますので、自然と広まっていくことはありません。従って、会社・組織として導いていく必要があるのです。

導き方は大きく2つあります。
一つは「人材開発」、もう一つが「組織開発」です。

人材開発

人財開発とは即ち、フィードバックを実践するスキルを磨くことです。
なぜフィードバックが重要なのかという前提事項を共有した上で、ポジティブフィードバックとギャップフィードバックを効果的に伝える方法について座学と実践で学んでいきます。

ポジティブフィードバックもただ良い点を褒めれば良いという訳ではありません。例えば、良かれと思って「〇〇さんと同じくらいすごいですね!」と言ってしまっては、言われた側も自分が褒められているのか分かりません。このような惜しいフィードバックから相手に伝わるフィードバックにスキルを磨いていく必要があります。

どんな場面で、どんなやり方でポジティブフィードバックを伝えると、より相手に伝わるフィードバックになるのか、コツを学び実践していくことが早道です。

また、ギャップフィードバックは苦手意識を持っている人が特に多いものです。改善点を伝えたら相手に嫌われてしまわないだろうか、上司に伝えたら評価に響くのではないか、このように考えてしまうのが普通です。

ギャップフィードバックにはさくっと伝える内容からきちんと伝える内容まで重さはまちまちです。それぞれのパターンをどんな場面で、どんなやり方で伝えると伝えやすいか、そして相手に伝わるか、これを学んで実践していく必要があります。

ただ、人材開発を行ったからといって、組織に定着する訳ではありません。この定着を行うために「組織開発」が必要となります。

組織開発

組織開発ではフィードバックの状況調査と調査結果の開示、そして実践している人の表彰のサイクルを回すのが基本的なセットです。

フィードバックの状況調査はフィードバックの実践度合とフィードバックを受けているかどうかの両面から捉えます。上司、同僚、部下の3方向で調査ができれば多面的に見ることが可能となります。

その結果を経営層だけではなく、現場の全員に対して一定程度の粒度で開示することで、自分や所属する部署の相対的な位置を知り、次の行動に移す動機づけとなります。

また、調査を実施し、表彰を行うというサイクル自体が組織としてフィードバックを奨励するメッセージとなります。

フィードバックが定着するとどんなメリットが?

フィードバックが定着した組織はどのような姿になるでしょうか。
ここでは大きく2つの特徴と6つのメリットを紹介したいと思います。

心理的安全性が高まる

まず、ポジティブフィードバックを常にもらう環境に身を置くことで、自身の存在が認められ、心理的安全性が高まります。

心理的安全性が高まることにより、たとえ失敗しても自身の安全が保証されていることから、挑戦する風土が生まれます。また、集中して取り組むことができるため、パフォーマンスがあがります。そして、役職や立場に関係なく、フィードバックを伝えられることから、問題点があれば即座に伝えられ、不正が起きづらい組織になります。

個人の成長がスピードアップ

もう一つは、フィードバックを受けることにより個人の成長スピードが速まるという点です。それにより、組織の競争力があがるだけではなく、自分自身の成長実感から働きがいが高まり、離職率が低下するというメリットも生まれます。

フィードバックのよくある疑問

このようにフィードバックが組織に定着することで良いことはたくさんありますが、導入するにあたってよくこのような疑問を頂きます。

「うちは伝統的な日本企業だから役職関係なくフィードバックをする文化は定着しないよ」

「ポジティブフィードバックはできても、上司に対してギャップフィードバックはできないんじゃないか」

ご指摘の通り、一朝一夕でフィードバックは定着しません。しかし、どんな企業であってもフィードバックは定着できます。

鍵となるのはトップの姿勢

鍵となるのがトップ自らの姿勢です。社長だけではなく、事業部長でも構いません。フィードバックを導入する組織の長が自ら率先して、フィードバックを行い、フィードバックを受ける姿勢が組織に浸透するかどうかの肝となります。

上司から部下にフィードバックを求めにいく

また、上司に対してのギャップフィードバックは部下から頑張って伝えるものではなく、上司から求めていくことで変えていくことが可能です。

「今日の私の説明に対してポジティブとギャップの両面からフィードバックを頂けますか?」

このように上司が聞く機会を定期的に設けることで、部下から上司に対してギャップフィードバックを行うことが習慣化されていき、いずれは上司が求めなくてもギャップフィードバックを行える組織に変革していきます。

最後に

人材が多様化し、これまでと同じように「察する」ことだけでは、コミュニケーションが成立しなくなってきています。フィードバックを導入することで個々の人を強くし、しいては組織全体をより強くしていきましょう。

この記事のポイント

  • フィードバックは日常的なコミュニケーションである
  • 人材開発と組織開発を行うことでフィードバックを定着できる
  • フィードバックを行うことで心理的安全性が高まり、個人の成長速度があがる
  • その結果、働きがいが高まったり、離職率が低下したり様々なメリットがある
  • どんな組織であってもフィードバックを定着させることは可能

本記事により、フィードバックが浸透した組織のイメージが湧き、働きがいのある組織への変革の一助となれば幸いです。

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