「仕事ができる」とはどういう意味でしょうか。普段、何気なく「仕事ができる」という言葉を使っていても、いざ言葉の定義を聞かれると答えに窮してしまう人もいるかと思います。弊社では「仕事ができる」とは「高い成果をあげること」と定義しています。
それでは高い成果を上げられる、仕事ができる人(ハイパフォーマー)に共通していることはなんでしょうか。弊社ではハイパフォーマーに共通するのはソフトスキルが高いことと考えています。これから見ていくようにソフトスキルはハイパフォーマーの誰しもが持っているスキルと言えます。
本記事をお読みいただき、ソフトスキルの重要性を理解し、人材育成の計画立案に役立てて頂ければ幸いです。
| ソフトスキルとは
ソフトスキルとは、どのような業界・職種でも求められる仕事をする上でのベースとなるスキルです。パワースキル、コアスキル、共通スキルとも呼ばれます。
具体的にはコミュニケーション能力、論理的思考力、チームワーク、リーダーシップなどが当てはまります。
反対の言葉にハードスキルがあります。こちらは、仕事や教育を通じて得た専門的な知識や技能を指します。ITエンジニアであればプログラミング言語の知識、財務経理であれば管理会計の知識、営業であればBANTやMEDDICなどの知識です。
仕事ができる人とは?
仕事ができる人とはどんな人だと思いますか?
この質問をすると、次のような回答が多く返ってきます。
優先順位をつけて仕事を進められる人、適切な判断ができる人、決断力のある人、頭の回転が速い人、課題発見をして改善できる人、メンバーと協力しながら仕事をする人。
これらはまさしくソフトスキルと呼ばれる能力なのです。
ソフトスキルが高い人は、周囲からも仕事ができる人(ハイパフォーマー)と認知されているのです。
それでは仕事ができる人(ハイパフォーマー)が持つこのソフトスキルという能力は何がすごいのでしょうか。
| ソフトスキルが重要な3つの理由
ソフトスキルは何をもたらすのか?その重要性と理由は主に3つあります。
ソフトスキルはすべての土台
1つは、ソフトスキルが土台で、ハードスキルがツールであることです。
ハードスキルは履歴書に書くことができます。Webマーケティング7年、無形商材の法人営業10年、Python 6年など資格のように記載することができます。
しかし、そのような人材が面接に来たとしても、面接で論理的に話せていなかったり、そもそもコミュニケーションが取りづらかったりしたらどうでしょうか。おそらく採用は難しいでしょう。
英語圏でソフトスキルに関して良く言われる言葉に"Hard skills will get you an interview, but you need soft skills to get and keep the job."(ハードスキルは面接に連れて行ってくれるが、仕事を手に入れ、働き続けるにはソフトスキルが必要である)があります。まさに、ハードスキルとソフトスキルの関係性を示していると言えます。
弊社ではよくハードスキルを車、ソフトスキルをドライバーに例えています。
どんなに高性能な車を持っていたとしても、ドライバーがペーパードライバーであれば、車の性能をうまく引き出すことはできません。
つまり、ソフトスキルが未熟であれば、せっかく得たハードスキルを活かすことができないのです。
時代の変化を超えて活用できる
2つ目は、時代の変化を超えて活用できるのがソフトスキルだからという点です。
技術の変化は激しく、数年経てば保有していたハードスキルが陳腐化しているというケースはどの業界でも起こります。最近では生成AIの登場により、プログラミングのソースコードをAIが作成することもできるようになりました。また、契約書のチェックもAIが代行してくれるサービスも登場しています。そのため、これまで安泰と見られてきた高度に専門的な職種ですら、知識だけではAIに代替されてしまうリスクが現実味を帯びてきました。
しかし、今のところ人と協働し、新たな価値を創造する仕事は人の専売特許のようです。
問題解決力やコミュニケーション力は10年後にスキルが陳腐化することはありません。これからのAI時代を見据えても、ソフトスキルこそが磨いていくべきスキルと言えます。
職種や階層を超えて活用できる
3つ目は、職種や階層を超えて活用できるという点です。
会社によっては数年で全く異なる部署に異動するというケースもあるでしょう。例えば、営業課長が人事課長に異動になったとしたら、営業で磨いた営業スキルの多くは活用できなくなります。しかし、ソフトスキルは別です。営業を通じて他社の内部の人間関係や人となりを鋭く察知する力などは人事課長になっても活かすことができます。
また、昇進すればするほど、ハードスキルの活用場面は減り、ソフトスキルの活用場面が増えます。例えば、プログラマーが昇進して、エンジニア系の組織長になったとしたら、自らがプログラミングのコードを書くことはなくなります。一方で、チームのプログラマーがどうやったら生産性高く働けるのかを考え、働きやすい職場づくりを行う、そのためにコミュニケーションを積極的に取るなどのソフトスキルを活用する場面が代わりに増えてきます。
このように職種が変わったり、役職が上がったりしても、ソフトスキルは活用することができます。
| 仕事の成果との関係性
ソフトスキルの重要性はお分かりいただけたと思います。ここで、ソフトスキルがどれだけ仕事の成果に直結しているかを明らかにした研究をご紹介します。
スタンフォード、カーネギーメロン財団がFortune 500のCEOに向けた調査の結果によると、長期的な仕事の成果は75%がソフトスキルによってもたらされていると報告されています。(※1)
また、ハーバード大学の別の調査では、職場における成功の85%はソフトスキルによると報告されています。(※2)
※1 1Levasseur, Robert E. (2013). "People Skills: Developing Soft Skills — a Change Management Perspective"
※2 World Journal of Advanced Research and Reviews, 2019, 03(02), 066072
これらの研究結果からも、土台であるソフトスキルが高い成果を生み出すドライバーであることがわかります。
ソフトスキルが重要な理由資料をダウンロードいただけます。
| ソフトスキルの高め方
それでは、ソフトスキルはどのように高めていけばよいのでしょうか。
まず前提としてソフトスキルは数日、数週間では伸びていかないという認識を持つ必要があります。論理的思考力が一日で伸ばせる方法があるとしたら、世界の教育産業は大きく姿を変えるでしょう。しかし、残念ながらそのような魔法の方法は存在しません。
論理的思考力を始め、ソフトスキル全般を高めていくためには少なくとも数か月単位の中長期の取り組みが必要です。
目に見えないスキルを鍛えるには
ソフトスキルは目に見えにくく、資格もないスキルですが、それでも“型”は存在します。
例えば、コミュニケーション力は伝える力、受け取る力、非言語コミュニケーションなどに分解ができます。更に伝える力はロジカルコミュニケーション、プレゼンテーション、ライティングなどに分けることができます。 そこまで分解ができれば、あとはロジカルコミュニケーションの基本である根拠並列型、解説型といった説明方法の“型”を少しずつ学習をすることで身につけることができます。
ただし、学習したらそれで終わりというわけではありません。一般にKnowing-Doing Gapと呼ばれる知っている状態と実行できる状態には大きなギャップがあります。ソフトスキルも型を知っていることと、実行できることには大きな壁があるのです。
目に見える成果につなげるためには
それでは、この壁はどのように乗り越えれば良いでしょうか。その答えは日々の業務活用です。
たとえ、根拠並列型、解説型といった説明する方法を学んだとしても業務で活用しなければ実行できるようになりません。
そのためには、
・学びをすぐに業務実践に移せる環境をつくること
(学びの時間は短く、業務活用事例を盛り込む、業務範囲と関連した内容から学ぶ等)
・業務活用の振り返りの時間を持たせること
(上長・メンターから業務活用の実践状況を聞く、躓いているところをフォローする等)
が必要となります。
型を学び、業務で活用する、このサイクルを中長期で回すことがソフトスキルの向上に繋がります。
「ソフトスキルは一日にして身につかず」、この認識から出発することがソフトスキルを高めるカギとなります。
しかし実務では、正しい"型"とその使い方を教わる機会はなかなか少なく、また日々ソフトスキルを意識し続けることは容易ではありません。
EdWorks(エドワークス)では、トレーニングと業務の実践、内省支援を行う、長期伴走型のトレーニングを提供し、ソフトスキル強化の支援を行っています。
真の課題を捉える力、行動を促す伝え方など、ソフトスキルで課題を感じている方はお気軽にご相談ください。
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