成長する人、しない人、その違いとは~メンバーの成長に課題を感じる人への処方箋~

成長する人としない人の決定的な差

同じような仕事をしていても、最初は優秀と思われていなかった人が急激に成長を遂げるケースもあれば、逆に最初は優秀だと思っていた人があまり成長せず、標準的な社員になってしまうケースがあります。

メンバーに成長意欲が感じられない、または、もっと成長してほしいと考えている方に向けて、この記事では「成長する人としない人」の違いを、考え方やマインドセット、環境の面から解説していきます。

埋もれる人、突き抜ける人

ある程度仕事の経験がある方は、成長する人と成長しない人がいることを身近に実感していると思います。

入社した時は優秀だと思ったのに、または20代の頃は他より抜きんでていたのに、いつの間にか埋もれてしまっている。そのような成長しなかった人を何人か思い浮かべることができるでしょう。

一方で、最初は特に目立っていなかったのに、気がついたら会社を支える屋台骨に成長していた。そういう方も何人か思い浮かべることができると思います。

これらの違いを生む要因はいったい何でしょうか。
人について語る時によく言われるのは、その人がもともと持っていた「素質」面と後天的に身につける「環境」面の2つです。

成長する人としない人を分けるのは、結局素質面なのか、環境面なのか、はたまたその両方なのか、これから考えていきます。

成長する人の特徴・素質面

まず、素質面の考え方を見てみます。

元々の素質に恵まれているというのは、俗に言う「地頭が良い」タイプであったり、コミュニケーションを取るのが上手な、いわゆる「コミュ力が高い」と言われるタイプの人間だと思います。

こういう人々は、他の人ほど苦労せずに問題の原因にたどり着いたり、他の人が苦労して築き上げる人間関係をいともたやすく構築できたりします。

新卒採用では素質面が重視される

仕事をする上でも素質面は無視できない要素になるため、これまでのキャリアが問われない新卒採用では、素質面が重点的に見られることになります。

入社希望者が数千人を超えるような就職活動の人気企業では、多くの就職希望者(学生)の中から素質面で秀でた人を採用できる可能性が高いため、必然的に採用された人々の母集団は素質が高い人が多く含まれることになります。(新井紀子氏による「シン読解力」の中でも就職難易度と読解力の関係性が語られています)

実際に筆者がソフトスキルのトレーニングを行う中で、就職人気度が高く、入社難易度が高いと言われる企業においては、元々の素質面が高い社員が多く存在するというのは、体感としてもまず間違いありません。

その後の成長を左右するのは「コーチャビリティ」

それでは、新卒入社時点での能力がそのまま成長に直結するかというと、実はそう簡単ではありません。これまで見てきた素質面は地頭やコミュ力といった側面でしたが、大事なのはもう一つあります。それが「コーチャビリティ」です。

コーチャビリティとはもともとコーチング業界で生まれた用語でCoach+able=「コーチされる能力」が原義です。他の人からの指摘やアドバイスを自身の成長に繋げられる能力と言うことができます。

どれだけ地頭が高かったとしても、新卒採用時点であらゆる仕事を完遂できる能力があるわけではありません。多くの失敗やミスを経験し、上司や先輩からのアドバイスを基に自分の能力を磨き続けていく必要があります。

この時にコーチャビリティが高いかどうかが、その後の成長を大きく左右します。コーチャビリティというと、新しい概念のように聞こえますが、古くから日本では「素直な心」や「他者の意見に耳を傾ける力」と呼ばれてきた考え方です。

名経営者が語る「素直な心」

京セラの創業者でJALの再建も行った稲盛和夫氏は

「素直な心とは、自分自身のいたらなさを認め、そこから努力するという謙虚な姿勢のこと」

と述べており、能力の高さよりもその価値を認めています。

歴史の偉人が語る「他者の意見を聞くことの大切さ」

もう少し時代を遡り、江戸時代に佐賀鍋島藩の山本常朝が口述した「葉隠」には、このような一節があります。少し長いですが、現代語訳とあわせて引用します。

人に超越する所、我が上を人にいはせて意見を聞く計りなり。並みの人は我が一分にて済ます故、一段超えたる所なし。人に談合する分が一段声たる所なり。何某役所の書付を相談申され候。我等よりは能く書き調ふる人なり。添削を請はるるが人より上なり。

(人を越えるためには、自分の考えていることについて、人に話をさせ、人の意見をよく聞くということだけである。 普通の人は、自分の理屈だけで済ますので、人を一段越えるということはできない。人に相談する分だけ、一段超えることになる。ある人から役所の書類について相談された。我々よりも、書きものを、よく調べて書く人である。添削を頼むところが人よりも上のなのである。)

その他にも歴史の偉人や現代の名経営者が素直な心を奨励する格言がたくさんあります。すべてを紹介すると紙幅が足りなくなるため割愛しますが、今も昔も成長をするためには、人の意見に耳を貸すというのが大きなポイントであることが分かります。

素質を活かす姿勢があって初めて成長につながる

ここまで見てきた素質面についてまとめると、以下のようなことが言えます。

POINT

元々持った地頭の良さやコミュ力の高さは武器である。しかし、それ以上にコーチャビリティ(素直な心)がその人の成長を左右する。

成長する人の環境面

それでは、上記の素質面が備わっていればそれで十分でしょうか。残念ながら素質面だけでは足りず、環境面も大きな要素として考えられます。

環境面とはその言葉の通り、人が成長するための環境です。 例として、以下の2人の社員について考えてみます。

十年選手と職種転換した社員の例

一人の社員は入社から10年間輸出管理の業務で審査を行っています。10年の間に様々な審査事例を見てきていることから、社内でも一目置かれ、様々な部署から相談を受ける中核人材となっています。

もう一人の社員も同じように輸出管理の仕事を行っていました。しかし、今年に入り業務内容が変更となり、いまは審査ではなく、自ら輸出先を開拓する営業活動に従事しています。新しい部署では経験がないため、先輩に教わる日々が続いています。

一人目の社員は現場で頼られるキーマンとなり、二人目の社員は新たな仕事でまた一から勉強をしている成長過程の社員です。アウトプットとしては一人目の社員の方が出せていますが、人の成長という意味では二人目の社員の方が成長をしているということに異論はないでしょう。

2パターンの社員、違いは「仕事の壁」

これは部署移動が成長につながるという例ではなく、二人を分けるポイントは「仕事の壁」にぶつかっているかどうかという点です。

一人目の社員はおそらく今後も審査の経験を積んである程度の成長を続けていくでしょうけれど、現時点で仕事の壁を感じていません。そのため、仮に本人に「仕事をする上での課題はあるか?」と尋ねても、切迫した課題を引き出すことは困難でしょう。

一方で、もう一人の社員に同じことを聞けば、様々な課題を吐露してくれるだろうと容易に想定できます。

仕事の壁に直面する機会が成長を促進させる

これこそが2つ目の環境面です。
実際に筆者がソフトスキルのトレーニングをしている中でも、同程度の能力の人が集まったとき、「今でも自分は十分にできている」という有能感を持つ人は、十中八九いまの仕事で壁に直面していません。一方で、成長意欲が高く「もっと能力を磨きたい」と考えている人は、仕事の壁に直面しているケースが往々にしてあります。

古くから「立場が人を作る」と言います。様々な経験を積み、そこで壁に当たることで人は困難を乗り越えて、さらに成長を遂げていくことができるのです。

機会と環境の大切さを説いた事業家の言葉

リクルートの創業者である江副浩正氏が残した

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

という言葉は、まさに成長を促進するためには機会と環境が大切であることを示しています。

成長には素質と環境の両面が重要

ここまで見てきたことをまとめると、以下のことが言えます。

POINT

人の成長には人の意見に耳を傾ける素直な心と、自分の能力を超えた仕事の2つが重要である。

社員にさらに成長してもらうために

それでは、これまでの話を踏まえて、社員にさらに成長をしてもらうために、上司や先輩、会社としてどのようなことができるでしょうか。

ここでは現場レベルでできること、会社レベルでできることに分けて整理していきます。

● 現場レベルでできること

人が成長を求めるきっかけはいくつかあります。そのうちの一つが、ロールモデルの存在です。ロールモデルというと難しく聞こえてしまいますが、何か特定の分野でも良いので、秀でている人を示すということです。

例えば、プレゼンテーションが上手なAさん、資料作成が上手なBさんというように、チーム内でこの分野であれば~さんが秀でているというロールモデルを示します。

ロールモデルがいると、そのロールモデルと自分を比べてギャップが分かります。Aさんに比べてプレゼンテーションが上手ではない、Bさんのような資料は作成できないといった具合です。

いうなれば、ロールモデルは特定の分野におけるTo-Be像です。To-Be像があれば、メンバーも自分自身のAs-Isと比べて、成長するべきポイント、ギャップが明確になります。

できる仕事ばかりを繰り返していると、人は慢心します。そのため、頑張らないと達成できない仕事をアサインするのも現場レベルで大切な人材育成です。目安としては、絶対に達成不可能ではないが、いまのままでは達成できない、少し背伸びした目標を与えることです。

これは人事部門ではなく、現場部門だからこそできる人材育成の典型例です。

仕事をしている中で良い点を伝えるポジティブフィードバックと、改善点や気づきを与えるネガティブフィードバックを高頻度で伝えることが重要です。

人は成功や失敗の中で自ら学び、成長をしていきます。しかし、他者からのフィードバックがなければ、正しい方向性で伸びていかない可能性があります。

たとえるなら、ゴルフの練習をする中で、鏡に映る自分自身を見ないまま、感覚だけで修正を加えていくようなものです。
他の人から見える姿を伝えることは、良い点をさらに強化し、弱点を補強することに繋がります。

会社レベルでできること

会社によってはCore Valueを定めていたり、行動指針を定めていたりすると思います。全社員が大切にするべき考え方や行動の中に、「素直な心」や「他者の意見に耳を傾ける」という点を入れることで、会社全体として行動を奨励することができます。

これは一部の部署からでもスタートできますが、できる限り全社員で共通の指針を持っていることが望ましいです。

組織風土は一朝一夕に変わりません。しかし、一切変わらないということもありません。変わる第一歩として、考え方を紹介し、自分を変えるトレーニングを行うのが望ましいです。いきなりバッターボックスに立たせるのではなく、トレーニングというバッティングセンターで練習を積ませることで、立ち上がりがスムーズになります。

チャレンジングな仕事を振って成長が見られた実例

実際にある中堅企業でメンバー育成に伴走した際のエピソードです。

Aさんという方は入社して8年目で中堅社員として現場で活躍をしていました。本人としては現場で成果を出せているため、現状に満足をしています。しかし、組織長はもっと難しい仕事を行い、チームを引っ張ってくれるようになることを期待していました。

そこで、筆者の会社でトレーニングを行うとともに、これまでよりも難しい仕事を本人にアサインしました。

すると、トレーニングの初期では自分自身の成長すべき点に気がついていなかったAさんも、徐々に課題が明確となり、トレーニング内容を積極的に用いながら新たな仕事にチャレンジをする好循環が生まれました。

結果的に、成長が停滞していたAさんも、1年後には新たな仕事を上長のサポート付きでなんとか遂行できるほどに成長しています。

まとめ

人が成長をするためには、元々の素質面だけでは不十分です。他者からのフィードバックを受け入れて成長をしていく「素直な心」というマインドセットに、成長を促す環境面の構築が欠かせません。

成長をしないのは本人に責任があるだけではなく、組織としての対応にも責任の所在があります。今回の記事をもとに成長を支援する組織につながるヒントを得て頂ければ幸いです。

当社では、人の成長に寄与するフィードバックのトレーニングやコーチャビリティ・素直な心を学べるトレーニング、そして現場部門と共同で進める伴走型のトレーニングを実施しています。

トレーニングの詳細をご紹介していますので、合わせてご参照ください。
・フィードバックとコーチャビリティを学ぶトレーニング
・現場部門と共同で進める伴走型トレーニング

人材育成のお悩みは、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

このコラムを書いた人

株式会社EdWorks

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株式会社EdWorks(エドワークス)は、ビジネスパーソンの能力開発を通して、個人の自己実現と企業・組織の生産性向上を実現します。


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