研修の効果測定は可能か?満足度調査は意味がない?

研修の効果測定は可能か?

人材育成・人的投資は費用対効果が分かりづらい。予算も確保しづらいし、経営層が意義をちゃんと理解してくれない。また、満足度が高いからと言って意味のある研修とは限らない。
このような声を人事担当の方からもよく耳にします。

確かに、今日何かしらの研修を受けて、その研修が満足のいくものだったとしても、それが自身のアウトプットにどれだけの影響を与えているのかというのは分かりにくいものです。

ここでは研修の効果測定は可能か、可能だとしたらどのような方法があるのかについて解説します。

先行研究

まずは研修効果の先行研究と測定事例についてご紹介したいと思います。

研修効果測定はよくカークパトリックの4段階評価が引き合いに出されます。

カークパトリックの評価法

研修を受けて満足したか、知識は身についたか、行動は変わったか、結果は出せたかという4段階で評価を行う考え方です。

理想は「結果」である効果を見せたいところですが、自社単独で行うのは現実的には不可能です。
なぜなら、投資対効果を“科学的に”実証しようとするならば、研修を実施する従業員と実施しない従業員を無作為に抽出し、実施後1年~数年後のパフォーマンスを比較する必要があるからです。
日々仕事の成果を求められる現場部門で、実証実験に数年付き合ってもらうことは現実的とは言えません。

それでは、投資対効果は検証できないのかというと、そうではありません。一社単独では難しくても、多くの企業の人的投資と成長率をマクロで分析すれば、人的投資の効果を実証的に検証することができます。

人的投資の収益率

これまでの先行研究で有名なのは森川 正之教授の「企業の教育訓練投資と生産性」(2018)です。ここでの結論をざっくりまとめてしまうと、教育訓練投資の収益率は、最も低く見積もって約50%、大きくて約600%とされています。これは機械への投資など物的な投資に比べても大きいため、人的投資が会社にとって意義があると説得する材料としては十分でしょう。

人的投資のマクロな意義はわかったが、目の前の研修をどのように効果測定するのか、というのが次のテーマです。

個社での効果測定

今年行った研修が来年、再来年になってはじめて評価できるのでは、PDCAサイクルは回せません。ですので、先ほどのカークパトリックのモデルに基づくなら、3段階目の「行動」に着目するべきです。

研修の目的は専門的に言えば、受講者の行動を変容させることにあります。つまり、行動が変わらなければ、研修の目的は果たせたとは言えません。

研修の目的を言語化

まずは研修の目的をきちんと言語化し、ブレイクダウンする必要があります。例えば、「主体的に行動できる人材を育成する」といったお題目はよく耳にしますが、主体的に行動するとは具体的にどのような行動かを明確にする必要があります。

目指すべき行動を細分化

「課題を与えられるだけではなく、自ら課題を発見し、率先してその課題解決に取り組む」
であれば、「自ら課題を発見して提議した」という行動を抜き出すことができます。

このように目指すべき行動を細分化することで、目的を明確化するとともに、研修前後の行動特性を定量的にチェックすることができます。

ここまでの議論を見てきたらお分かりの通り、満足度調査は研修の効果測定としては不十分です。なぜなら、研修に満足したとしても内容を理解していなければ意味がありません。そして内容を理解していたとしても、行動に繋がらなければ意味がないからです。

研修効果の定量化

弊社では、3か月程度のプロジェクト型の育成を行っています。3か月、4か月経過した上でスキルがどのくらい変化したかを測定します。
その際には、育成の目標を行動ベースで細分化したチェックシートを活用して、スキルの変化を定量的にお出ししています。

スキルレーダーとスキル変換

チェックシートは本人だけでなく、上司の方にも埋めてもらっています。
よく「上司によって評価にはばらつきが発生しませんか?」という質問を頂きます。
確かに上司によって評価が厳しい、甘いといったばらつきは発生します。しかし、同じ上司に前後の変化を測定してもらうことで、厳しい上司・甘い上司でも“変化”に着目すれば成長を横並びで評価することが可能となります。

また、定量的な測定だけではなく、定性的なコメントももらうようにしています。上司からスキルごとに評価に対するコメントをしてもらうことで、受講生を多面的に見ることができ、次の成長を考える材料とすることができます。

自社で行っている研修は本当に効果があるのだろうかと疑問を覚えたり、人材育成に投資する意義を社内に納得させるためのファクトをどう集めようかと悩んでいる方は、“行動の変化度合い”に着目した見える化の取り組みをぜひ参考になさってください。

まとめポイント

  • 研修効果の測定は、”行動”の変化に着目することで定量化できる
  • まずは研修目的を言語化し、目指すべき行動を細分化
  • 研修前後に行動ベースのチェックをし、変化を可視化

研修効果の測定まで行いたいけど障壁があって進めるのが難しいというケースは、どの企業様でも大なり小なりあります。他社様の参考ケースもお伝えさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。


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