一日研修はオワコンか?一日研修は意味がない?

一日研修はオワコンか

「一日研修は長すぎる」「業務時間が削られるため辛い」「研修自体がだるい」といった声は企業研修に携わっている方なら一度や二度ならず、聞いたことがあると思います。実際に弊社が過去に行った調査(企業研修に関する実態調査)でも、研修の不満第一位は「時間が長い」(42%)でした。

そのような一日研修は効率が悪く、業務負荷が高いため、週1時間の反復型伴走トレーニングを実践している弊社ですが、このトレーニング手法をご紹介をしているとお客様より頻繁に頂く質問があります。

それは「一日研修はどんな場合でも効果が薄いのか?」「一日研修は全て辞めた方が良いのか?」という質問です。
今でも一日研修を実施しているという会社が大多数だと思いますので、今回は一日研修は全ての場合において意味がないのか、について解説していきます。

知識の集中投下で成長するのは一部の人だけ

まず、弊社が一日研修は効率が悪いと申し上げる理由をご説明します。
それはシンプルに、受講生が一日に詰め込まれた内容を消化し、業務で実践しきれないからです。

一日缶詰の研修(大体において5~7時間程度)の研修を実施したとしても、その中で学んだ内容を一体どれだけ業務で実践できるようになるでしょうか。

たとえば、一日研修で「ロジカルシンキング」をみっちり座学と演習で学んだとします。
ロジカルシンキングでよく扱われる内容として、演繹法・帰納法、ロジックツリー、MECEなどがあります。
研修で実際に手を動かしながらロジックツリーを書いてみるなど、研修自体は非常に充実した内容になると思います。

そのため、終了時点での受講生満足度はよほどのことがない限り高いケースがほとんどです。

しかし、翌日以降に通常業務へ戻った受講生はどうなるというと、前日に学んだ内容の中で、最も印象に残った事柄は実践するものの、他の内容は実践することなく忘れられていきます。
これは仕方のないことで、一日で学ぶ内容は多岐にわたりますので、最も印象に残ったこと以外はなかなか思い出すことすら難しいものです。

さらには、時間が経つにつれて、最も印象に残ったことであっても、忘れてしまい徐々に昔の仕事の進め方に戻ってしまう受講生も出てくるでしょう。これはエビングハウスの忘却曲線※1でも言われていることです。

学生時代にたとえるとするならば、一日研修というのは、一日缶詰で古文や漢文を教え、翌日以降は自分で解いて下さい、という授業のようなものです。
一部の優秀な生徒は一人でも解けるようになりますが、ほとんどの人は多少できるようになっただけで終わってしまうでしょう。
それは、翌日以降に生まれた疑問は自分自身で解決していくしかありませんので、仕方のないこととも言えます。

同じように、ビジネスパーソン向けの研修も一日で実施したとしてしても、一部のハイパフォーマーだけが成長し、残りの人にはほとんど効果がないという結果に終わってしまいます。

※1

エビングハウスの忘却曲線
学習した情報は、1時間後には56%、1日後には74%、1週間後には77%、1ヶ月後には79%を忘れてしまうというドイツの心理学者、エビングハウスが発見した曲線のこと

知識の分割投下は業務実践を通じた行動変容へつなげられる

研修のゴールは知識を得て終わりではなく、行動変容にあります。

従って、弊社は業務で実践できる分量(1時間)に分けて、その場のワーク中心ではなく、実業務を通じて実践をしてもらう形式をとっています。
そして、実践を通じて出てきた不明点は翌週のトレーニングにて解消して頂いています。

余談ですが、一日研修が現在スタンダードとなっているのは研修業界の構造に起因します。
講師を一日単位でアサインし、効率的に稼働してもらいたい研修事業者側と、現場部門との日程調整がしやすい人事の思惑が一致した結果と言えます。
ですから、一日研修が行動変容に効果的だから採用されている、という訳ではありません。

研修目的に応じて一日研修も有効

では、本題の「一日研修はどんな場合でも効果的ではないのか」という点ですが、これまでの議論を踏まえるとこのように言えます。

”一日研修は多くの場合には効果的ではないが、知識詰め込み型ではない研修では有効な場合もある”ということです。

例えば、マインド研修やキャリア教育など、これまでの自分自身を振り返ってマインドを切り替えたり、今後のキャリアを考えたりする研修は集中的に実施する意味があると言えます。
このような研修は、知識を詰め込むためのものではありませんので、一日缶詰で行ったとしても知識の消化不良に陥るリスクはあまりありません。

期待している行動変容をどのように引き起こしていくのかを考えた上で、消化不良とならない内容に抑えられるのであれば、一日研修も選択肢に入れても良いと考えています。

一方で、まだまだ研修は一日という慣習(固定観念)も残っていますので、週1時間の伴走型トレーニングの有用性を弊社も引き続き訴えていきます。

どの研修スタイルであってもフォローアップは重要

どうしても週1時間の時間が取れないという会社(シフト交代制などで毎週1時間同じメンバーで集まれないなど)は、集中的に時間を確保しつつ反復型にするという手段もあります。

たとえば、3時間の研修を行い、1,2か月後に1時間程度のフォローアップ研修を実施するという方法です。
フォローアップ研修では各自から業務実践の結果を報告し、疑問点を解消する場とします。

たった1時間であったとしても、フォローアップの場があるかどうかで、受講生の業務実践への向き合い方が変わりますし、疑問点を放置することもなくなります。
これからの研修設計の参考にして頂ければ幸いです。

こちらも余談ですが、研修終了後にレポートを提出させるという企業もあられると思います。研修で学んだ内容をアウトプットする機会としてやり方次第では効果的です。ただ、研修を受講→レポート提出で終わってしまっては、先ほどの課題点をクリアできませんので、実践期間を設けた上でレポートを提出するなど、やりっぱなしにならない工夫を追加することで、効果を高めることができます。

EdWorksでは受講生の業務や勤務形態に応じて柔軟に対応させていただいております。他社様の参考ケースもお伝えさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。


関連するセミナー・調査レポート

行動変化を促す研修構築の方法とは
研修は「気づき」を与える場でいいのか?業務に活かせる「行動変化」を促す研修構築方法
企業研修に関する実態調査レポート
【企業研修に関する実態調査】受講者の約8割が「研修の内容を覚えていない」と回答
企業研修と研修効果に関する実態調査レポート
【企業研修と研修効果に関する実態調査】8割の研修で実施後のフォローアップが行われていない